何だろう?二階が騒がしい。
始めは二人で何か話しているのかな?っと思った声は階段を上るにつれて、どんどん大きくなっていく。
英二・・・?
伊織くんの声は小さくて聞こえないけど・・・英二は何か叫んでいる様だ。
何かあったのかな?
まさか・・・ケンカをしているなんて事は、流石にないとは思うけど・・・
軽い胸騒ぎを覚えながら、俺はトレーに乗せた紅茶をこぼさない様に急いで階段を上った。
だけど・・・
「英二!!!!」
部屋のドアを開けて目に飛び込んできたのは、英二が両手で伊織くんを突き飛ばすところだった。
「何やってるんだ!!!」
ガシャンとトレーを机に置くと、俺はすぐにベッドに倒れ込んだ伊織くんに駆け寄った。
伊織くんは苦しそうに胸を押さえている。
英二・・・・
「どうして・・・」
英二の方へ振り向き見上げると、英二は呆然と立ち尽くしていた。
どうして英二がこんな事を・・・・
「・・・いし・・おおいし・・・」
「あっ!ごめん伊織くん。大丈夫か?」
伊織くんの声に向き直ると、伊織くんの顔が更に苦痛に満ちていた。
額に汗をかきながらゼイゼイと胸で呼吸をし、のどからはヒューヒューと音が漏れている。
これは・・・発作?!
伊織くんの顔を覗き込んだ。
「伊織くん!!」
「・・・いし・・・く・・すり・・・・」
伊織くんは俺の腕に縋るようにして、何とか声を絞り出した。
「薬だな!!ポケットに入れてあるのか?」
伊織くんが首を横に振り、部屋のドアの方を見た。
ドア?
そうか・・・鞄だ!!
鞄をリビングに置いて来たままだ!!
「鞄の中に入っているんだな?」
伊織くんが頷く。
「英二。伊織くんを見ててくれ」
俺は英二に声をかけて、部屋を飛び出した。
すぐ戻るから伊織くん・・・頑張ってくれ。
部屋に戻った俺は伊織くんをベッドに座らせ、薬を吸引させた。
これで治まってくれればいいが・・・
背中を擦りながら、落ち着くのを待った。
「伊織くん・・・大丈夫か?」
「うん・・・ありがとう・・・もう平気・・・」
暫くして呼吸が落ち着いて来たのを見計らって声をかけた。
伊織くんはまだ少しゼイゼイと胸で呼吸をしていたが、どうやら薬が効いてきたのか顔色が戻ってきている。
そうだな伊織くんはこのまま安静にしていればもう大丈夫だろう・・・・
俺はずっと黙ったまま立ち尽くしている英二を見上げた。
英二は青い顔をして、伊織くんを見ている。
二人の間に何があったのかはわからない・・・
何故英二が伊織くんを突き飛ばしたのか・・・?
何もないのに英二が伊織くんを突き飛ばしたとは思えないけど・・・
だけど・・・どんな事があったにしろ、突き飛ばすのは良くない。
今回の伊織くんの発作はすぐに治まったけど、もしこの発作が治まらなければ伊織くんの命に関わっていたかも知れないのだから・・・
「英二・・・」
俺は伊織くんをベッドに寝かせ、立ち上がった。
「伊織くんに謝れ」
英二は青い顔のまま無言で俺を見た。
「英二。何があったかは知らないけど、突き飛ばすなんて良くない。
もし伊織くんの発作がすぐに治まらなかったらどうなっていたと思うんだ?
伊織くんの気管支が弱い事は英二にも言った筈だろ?」
俺は英二の腕を取って、引っ張った。
「英二。ちゃんと謝るんだ」
伊織くんの前に立たせると、伊織くんが俺を見上げる。
「大石。もういいよ・・・」
「いや駄目だ。英二」
俺は無言で俯く英二に強い口調で促した。
「・・い・・や・だ・・・・」
英二が俯いたまま微かに聞こえる程度に呟いた。
「えっ?何だって?」
「だから嫌だって!!謝らないって言ってんだよ!」
英二が俺の手を振りほどいて、青い顔をしたまま睨みつける。
「いい加減にしろ!英二!」
「何だよ!大石っ!俺が何も無くて突き飛ばしたりすると思ってるのか?
俺よりこいつの肩を持つのかよ?!」
「そういう問題じゃないだろ英二。自分が何をしたのかわかっているのか?
今回は大事に至らなかったから良かったものの・・・」
「わかってるよ!!」
英二が俺の言葉を遮って叫んだ。
「わかってるけど・・・だけど・・・・」
英二が両手を強く握りこんでまた俯く。
「英二・・・」
俺は英二の肩に手を置いた。
「もういい・・・もう知らない!!大石なんて・・・伊織と仲良くやってればいいんだ・・
大石の・・・大石の・・・裏切り者!!!!!」
「英二っ!!!」
英二は俺の手を払いのけて、そのまま部屋を飛び出して行った。
うっ・・・裏切り者・・・って・・・
英二の奴・・・・
俺は大きく溜息をついて伊織くんを見た。
「ごめん・・・伊織くん・・・」
「別にいいよ・・・それより追いかけなくていいの?」
伊織くんが体を起こしながら、俺を見る。
追いかける・・・か・・・
その方がいいのか・・・・
俺は英二が出て行ったドアを見つめた。
「いや・・いいよ。英二はきっと戻って来るから・・・」
このまま伊織くんを置いて英二を追いかけても何も解決にはならない・・・
それに英二だって本当はわかっている筈なんだ。
「あんな風に出て行ったのに?」
「そうだな・・・それでも英二は戻って来るよ」
「信用してるんだね」
「あぁ」
俺は力強く答えた。
英二は必ず自分で帰って来る・・・
「何ていうかさ・・・英二はよく気分屋なんて言われる事があるんだけど・・・
本当は周りの人に気を使えるいい奴なんだ。
だから普段は今回みたいに絶対に突き飛ばしたりなんてしない・・・
どちらかというと・・・俺の方が感情的になると英二を突き飛ばす事があって・・・
それで前もケンカになって・・・いや英二もあったかな・・って何言ってんだろうな・・・」
「大石・・・」
「兎に角・・・ごめん。英二が戻れば英二も謝ると思うけど、今は英二の分も俺が謝るよ」
俺は伊織くんに深く頭を下げた。
「大石。謝らなくていいよ」
「いや・・・でも・・・」
「英二は何もないのに人を突き飛ばしたりはしない・・・」
えっ・・・・?
「伊織くん?」
「信用しているんだろ?」
伊織くんが真っ直ぐ俺を見据える。
まさか・・・・やはり・・・
「何か・・・あったのか?」
英二が伊織くんを突き飛ばすぐらいの何かが・・・
「ちょっとね・・・いや・・かなりかな」
言い直した伊織くんがチロッと舌を出した。
「大石の初恋は俺だって言ちゃった」
「えっ?」
俺の初恋・・・?
「あと・・・テニスをしてなきゃ英二なんて大石の友達にもなってないって言ったかな・・」
それは・・・酷いな・・・英二も怒る筈だ・・・
でも・・・
「どうして・・・そんな事を?」
俺は小さく溜息をついて、椅子に座った。
理由もなく・・・伊織くんがそんな事を言うとは思いたくない・・・
何か・・・何か俺に突然会いに来た事と関係があるんじゃないのか?
「そうだな・・・何から話せばいいんだろう。
平たく言えば、二人が本当に仲良さそうで・・・
大石が英二を大切にしているのがわかったから・・・嫉妬と八つ当たりかな?」
「嫉妬と八つ当たり?」
「うん。実は俺・・・長野で親友が出来たんだ。
俺の事を本気で怒ってくれるそんな友達が・・・でも・・・
最近わからなくて、ひょっとしてコイツは俺が喘息持ちだから・・・
俺の体を気遣って一緒にいるんじゃないかって・・・それで、その事で喧嘩して・・・ここに逃げてきた」
「伊織くん・・・」
「迷惑だよね。友達と喧嘩したから会いに来ただなんて・・・
でも大石の事は引っ越してからもずっと気になっていたんだ。
いつか会いに行こうって本当に思っていた」
「うん・・」
「だからって言い訳みたいだけど・・・
喧嘩した時に大石の顔が浮かんで、気付いたら電車に乗ってたんだ」
伊織くんが眉間にシワを寄せて話す。
俺は静かに耳を傾けた。
「だけど会いに来てみれば、大石の隣には英二がいて・・・仲が良くて・・・
その姿が羨ましくて・・・俺はこんなに苦しんでいるのに・・英二はって・・・
だから嫉妬と八つ当たり・・・俺は英二に突き飛ばされても仕方ない事をしたんだよ」
「そうか・・・」
やはり俺に突然会いに来たのには理由があったんだな・・・・
仲のいい友達・・・大切だから一緒にいるのが不安になる・・・そんな友達
伊織くんにとってとても大事な存在なんだな。
しかし・・・それで英二は・・・
俺は目を瞑った。
もう少し英二の気持ちを汲んでやるべきだったんじゃないか?
伊織くんの話を聞いた後でも、突き飛ばした事はやはり良くない事だと思っている。
だけど・・・英二が何もなく人を突き飛ばしたりしないそれは俺もわかっていた筈なのに。
もし英二が言われた事と同じ事を俺が言われていたら・・・
俺も英二と同じ様に動揺して、返す言葉も無く不安に襲われていたと思う。
英二・・・
「大石。ごめん・・・俺・・」
伊織くんの声に目を開けた。
「伊織くん・・その言葉は直接英二に言ってやってくれないか・・・?」
「そうだよね・・・・うん。わかった」
俺は小さく頷いて、伊織くんを見据えた。
「じゃあもう英二の話は終わり・・・それよりも・・・その友達の話をしよう」
「大石・・」
ホントは英二を今すぐにでも呼び戻したい・・・
呼び戻して誤解を解いて・・・その上でちゃんと伊織くんに謝って・・・
でも・・・それじゃあ駄目なんだ・・・よな。
英二が自分から謝りたいと思わなきゃ・・・
だから今は・・・ここまで俺を頼ってきた伊織くんの力になろう。
俺で力になれるなら・・・
「伊織くんにとってその友達はとても大切な人なんだろ?じゃあ仲直りしなきゃ」
「でも・・・俺・・・かなり酷い事言って来たから・・・」
「それでもその友達が必要なんだろ?」
「・・・・・・」
言葉を詰まらせた伊織くんに俺は更に続ける。
「伊織くんがそれだけ大切に思っているのなら、その友達も伊織くんの事をきっと大切に思っている筈さ」
「そう・・・かな?」
「あぁ。勇気を出して、もっと素直に話してみろよ」
伊織くんがこれだけ大切に思っているんだ・・・・きっと大丈夫
「大石。帰ったらアイツも・・・大石が英二を信用して待つように俺の事待っててくれるかな?」
「あぁ・・・きっと待ってるさ」
俺が英二を待つように・・・・
俺が英二を信用するように・・・
英二・・・早く帰って来いよ・・・待ってるから・・・
ちゃんと話をしよう。
俺の言葉にようやく伊織くんが笑顔を取り戻した。
「大石・・・1つだけ聞いていい?英二は大石にとってどんな人?」
俺にとって・・・英二は・・・
「ダブルスのパートナーで親友で・・・世界で一番大切な人」
あれからもう2時間半・・・
英二はまだ戻って来ない・・・・
「大石・・・俺・・・そろそろ帰らなきゃ・・・・」
「そうだな。今日中に帰るなら、もう出ないと・・」
「うん」
英二・・・間に合わなかったか・・・・
俺達は部屋を出て玄関へと向かった。
「大石。俺のせいで色々ごめん。英二には嫌な思いをさせたまま帰るけど・・・
大石からよく伝えておいて」
「わかった」
「それにしても・・・大石が誰かにあんな風に怒るところ初めて見たよ」
「そうか・・・?」
「本当に英二が大切なんだね。羨ましい・・・」
「伊織くんの友達も本気で怒ってくれるんだろ?」
「えっ?あぁ・・・うん。そうか・・そうだよね」
「頑張って仲直りしろよ」
「ありがとう・・・大石」
靴を履いた伊織くんと握手を交わす。
「今度来る時はその友達と一緒に遊びにおいで」
「うん。そうする。その時は4人で遊ぼう。じゃあ・・・」
伊織くんが玄関のドアに近づいた時に勢いよくドアが開いた。
「あっ・・・」
「あっ・・・英二・・」
「えっ・・あっ何・・・伊織帰るの?」
英二は肩で息をしながら、伊織くんと俺を交互に見ている。
その姿に伊織くんが一歩近づいた。
「うん。だけどその前に・・英二に俺・・・」
「ちょっ!!ストーーップ!!待って俺に先に言わせて!!」
英二はそのまま伊織くんに深く頭を下げた。
「伊織ごめん!!突き飛ばしたのはやっぱ俺が悪い!!
俺・・・大石からお前が体弱いの聞いてたのに・・・ホントにごめん!!」
俺は英二のその姿に胸が締め付けられる思いがした。
この時間まで真実を知らない英二は色々と葛藤していたんだろう・・・
伊織くんに言われた事に傷ついて・・・
自分がしてしまった事を後悔して・・・
英二・・・
だけど英二は・・・戻って来た・・・手を出した事を謝る為に・・・
ありがとう英二・・・信じていたよ。
「俺もごめん・・・英二・・・アレは全部嘘だから・・・」
伊織くんも英二と同じ様に頭を下げた。
「へ?」
驚いた英二が頭を上げる。
「えっ?何?嘘ってどういう事?」
「その辺りは・・ごめん。もう時間が無いから、大石に聞いて・・・
ただ1つだけ・・・今回の事は全て俺が悪い。
だからもう英二は気にしないで・・・・・」
「えっ気にしないでって・・・?えっ・・大石?」
英二が驚いた顔で俺を見る。
俺は小さく英二に頷いた。
「帰る前に英二に会えてよかったよ。じゃあ・・・あっそうだ・・・」
ドアノブに手をかけた伊織くんが思い出したように戻って来て、英二に何か耳打ちした。
耳打ちされた英二は顔を赤くしている。
何を言われたんだ・・・・?
「じゃあ本当に帰るね。今日は本当にありがとう大石」
「あぁ。気をつけて」
「じゃあね。英二」
「あっうん。またな」
夏の嵐のような伊織くんが手を振って帰っていった。
パタンとドアが閉まって、俺達はようやく二人きりになった。
「英二。上がるだろ?」
「うん」
コップに冷えたお茶を入れて、ソファに座る英二に差し出した。
「サンキュー大石」
「英二。それより今まで何処にいたんだ?」
「公園」
英二は答えながらお茶を飲む。
こんな時間まで・・・外は暑かっただろうに・・・
「ごめんな・・・英二」
あの時にもっと上手く英二に接する事が出来れば、英二が出て行く事はなかったかも知れない・・・
俺はいつも後で後悔するんだ。
「何で大石が謝んだよ」
英二が空になったコップをテーブルに置いた。
「突き飛ばしたのはやっぱ俺が悪いし・・・
大石が謝れって言ったのは正しかったって思ってるよ・・・
まぁあの時は大石が俺の話聞いてくんないし・・・伊織の肩ばっか持っちゃってさ・・・
裏切り者って真剣に思ったけどさ・・」
「真剣にって・・・そりゃないだろ?」
「だってあの時はさ・・・」
言いかけて英二が俺を真っ直ぐ見据えた。
「いいや・・・もう。それよりあれは嘘だって話。大石は伊織から聞いたんだよな?」
「あぁ聞いた」
「俺にもちゃんと説明してよ」
俺はそれから英二が出ていった後の話を詳しく英二に語った。
何故伊織くんが突然俺に会いに来たのか・・・
悩んでいた事、友達の事、俺達の仲に自分達を重ねた事・・・
それで英二に八つ当たりして、あんな事を言ってしまったのだと・・・
「ふ〜〜〜ん。人騒がせな奴」
黙って聞いていた英二が、腕を組みながら呟いた。
「英二に悪い事をしたって謝っていたよ」
「それは玄関で聞いたからいいよ・・・俺、もう気にしてないし・・・あっ・・・」
「何?」
「えっと・・・それよりさ大石の初恋って誰?」
「えっ?」
英二が何か思い出した様な声を上げたから、何かと思えば・・・その話?
「俺・・・大石の初恋の話って聞いた事なかった・・・よな」
鼻の頭をかきながら、戸惑うように聞く英二。
伊織くんが英二に俺の初恋はって話をしたって聞いてから・・・
きっと必ず英二は聞いてくるだろうな・・・って覚悟はしていた。
だから俺は・・・
「俺の初恋は・・・英二だよ」
不安や戸惑いを拭い去れる様にと、英二の目を真っ直ぐ見つめて答えた。
「お・・・れ?」
「あぁ。入学式の時に英二を見かけてさ・・・」
話しながら思い出す。
満開の桜・・・あの日桜を見上げる英二に心奪われた。
あんな事は初めてだった。
「英二は覚えてないだろうけど・・・俺入学式の日に英二に声をかけたんだ・・
『テニス部に入部しなよ』って・・・」
懐かしい思い出
今思えば・・・もうあの時から俺の想いは始まっていた。
だから英二がテニスをしていなくても・・・きっと俺は英二を探していた。
赤毛の男の子・・・エイジ
それだけしか知らなかったとしても・・・
きっと・・・・
「えっ?えぇ!!ちょっと待って・・・あれ大石だったの?」
「ん?あれって?」
「だから声かけたんだろ?入学式の日に『テニス部に入部しなよ』って・・」
「あぁ。英二がさ・・勧誘のチラシ飛ばしちゃって・・その時に一緒に拾って・・思わずな・・・」
我ながらあれはないよな・・・心の中で苦笑する。
英二と友達になりたくて、出てしまった言葉。
「ホントに大石だったんだ・・・」
「えっ?何?」
英二が噛締めるように何度も『そっか・・そっか・・』と繰り返し呟いている。
何がそっか・・・なんだろう・・・?
英二もあの日の事を覚えていてくれた・・という事なのだろうか・・・?
「英二・・?」
「嬉しい・・・アイツが大石だったなんて・・・
大石だったらいいのになって思う事は何回もあったんだけどさ・・・
確信がなかったから・・・聞けなくってさ・・・」
「えっ?」
「大石。俺さあの時に声をかけられたから、テニス部に入ったんだよ」
「そう・・・なのか」
俺が声をかけたから・・・英二がテニス部に?
そう思うと何だか嬉しい。
あの時はただただ・・・自分の先走る思いを止められなかったのが恥ずかしかったけど・・・
「でもさ大石。大石は俺ってわかってんだから・・・言ってくれれば良かったのに・・・」
「俺、話した事なかったかな?」
「ないよ!あればこんな事になってないじゃん!」
「まぁ・・・そうだな・・・」
俺達は顔を合わせて笑った。
伊織くんが突然現れて・・・どうなるかと思ったけど・・・
夏の嵐のように過ぎてしまうと・・・あの嵐はなんだったんだってぐらい穏やかで・・・
俺達の仲もいつも通り
いつも・・・・・・ん?
そういえば、俺も英二の初恋の話って聞いた事がないんじゃないか・・・?
うん・・・そうだ・・・ない。
俺じゃないと言われるのは怖いけど・・・
ここまで来たら・・・聞くしかないよな。
「とことで・・・英二」
俺は立ち上がると、英二の横に座りなおした。
「俺。英二の初恋の話って聞いた事がないんだけど・・・」
ドキドキしながら恐る恐る聞くと・・・
「大石に決まってんじゃん!!」
即答で返って来た。
「ホントか・・・?」
あまりに即答で・・・かえって不安なんだけど・・・
エピソードとか・・・そういうのはないのか?
「それよりさ・・・大石。昼間の続きしよ」
そうすればもっと俺も・・・・って・・・
「は?」
「しよ」
「えっ?」
「何驚いてんだよ。いいじゃんか」
「えぇぇぇぇぇぇぇ?」
英二が俺に覆いかぶさる。
「いいじゃんかって・・・ここで?」
「誰もいないからいいじゃん。気にすんなよ」
「気にすんなって・・・」
英二は・・・気にしろよ・・・
ここは俺の家のリビングだぞ。
だけど・・・誘われて断れる訳も無い・・・
俺の目を覗き込む英二を見返した。
「英二。途中で恥ずかしいって言っても知らないからな・・・」
「言わないよ」
強気に答える英二・・・でも顔は真っ赤だ。
英二・・・
俺は苦笑しながら英二をゆっくり組み敷いた。
上から英二を見下ろす。
「可愛いよ」
「バーーーーカ」
照れてプイっと顔を横にする英二に更に苦笑して、俺はそっと英二の赤い髪を撫ぜると
「英二・・・愛してる」
甘く囁いて、頷く英二に深く唇を重ねた。
最後まで読んで下さって本当にありがとうございますvv
疲れてませんか?大丈夫ですか?
今回大石の初恋は英二だよって話をまぁ書きたかった訳ですが・・・
オリキャラを出したばかりに・・・その説明に手間取って長くなっちゃいました☆
お待たせした方本当にスミマセン・・・
そして・・オリキャラ出す必要があったのか?って疑問は心の中にしまっておいて下さい(笑)
という訳で・・・こんなお話ですが、楽しんで頂けていたら嬉しいです。
2008.8.13